権利者の許可なしでも作品が使えるフェアユース
権利保護の著作権について、原則を大きく変える議論がはじまっています。公正な利用であれば権利者の許可がなくても作品が使えるフェアユース規定を探り入れる動きです。音楽や映像などコンテンツの流通を中心にデジタル産業への成長期待は高いですが、法整備の遅れが足かせになっているようです。
日本の著作権法では、複製権や公衆送信権などがあります。音楽や映像の流通自体権利者に損害を与えなくても、今の法体制では違法になりかねないものがほとんどです。
現状の法律では検索サービスのサーバーは日本に置けず、管理が不便なのが現状です。
日本で事業を展開する大手検索会社はサーバーを米国に置くことが多い。検索サービス運営の
ためにサイトをサーバーで複製するのはフェアユースの範囲で無許諾でも可能といわれているからです。
一方、日本の著作権法には、適法性を担保する条文がありません。
知財本部では、フェアユース導入に絡む問題について、専門調査会で論議が進められています。
今春始まった自民党の知的財産戦略調査会もフェアユースの議論に前向きです。
実は文化庁も昨年秋、著作法の例外規定にくわえることで検索エンジンの問題を解決する考えを示しました。ただ、例外をひとつずつ示す限定列挙の方法のため、公正利用を幅広に解釈しにくく、融通性が乏しいといいます。
米国のフェアユース規定は包括的に、公正利用の範囲なら侵害ではないとする点が特徴です。公正利用に該当するかどうかは裁判所が判断します。法律の解釈に柔軟性があり、新ビジネスが生まれやすいようです。
一方、日本の限定列挙方式は事前に何が違法かを判断しやすい半面、発展するビジネスの動きに法改正が遅れかねません。
知財本部では、例外規定の条項は残しつつ「その他公正な利用と認められる場合」という条項を最後に加えることで、日米の法律の優れた点を生かす日本版フェアユース導入を目指す考えです。
フェアユース本家、米国では、2007年にIT業界の団体がフェアユースの経済効果は年間5百兆円以上とする報告を発表しました。米国は、日本よりも情報を資源として共有することに前向きな国柄であることが産業振興に役立つ一因になっているようです。
国内では導入に慎重な意見も出ています。
勝手な解釈で権利侵害が横行しても、裁判を経ないと保護されないというのでは権利者の負担が増えると言うのです。
実際米国でもすべての営利目的の複製が合法になるわけではありません。出版計画中の回顧録を無断で雑誌に掲載した行為は公正利用と認められませんでした。
ソニーのビデオ録画機の家庭内利用については、合法と認められるまで10年近い歳月を費やしました
一方、大学などでは非営利で社会的に有意義な取り組みが広がると導入に期待する声も強いようです。
慶応大学などは05年から、非営利事業として大学の授業やレジュメなどのネット公開を始めました。
現在は国内21大学に広がっていますが、講義で使った文献などの権利者に公開の許諾を得る交渉に時間がかかり、公開数は全体で約1000講義にとどまります。
米国ではマサチューセッツ工科大学の場合、全1800講義を公開しています。
判例の積み重ねが法律となる米国に比べ、日本の著作権法は権利者保護の観点で定められた規定を少しずつ修正してきた経緯があります。
成り立ちは違っても、時代の要請に応じて、多くの利害関係者の視点に配慮したルール作りが求められることには変わりはありません。
