内部告発で発覚する偽装
このところ従業員や取引業者等による内部告発(ホイッスルブロー)を契機に、消費者の安全に重大なかかわりをもつ企業の不祥事がつぎつぎと発覚しています。
BSE対策から企業利益を守ろうとする身勝手な企業姿勢が偽装を招く
BSE 対策の国産牛肉買い上げ事業をめぐって偽装事件を起こした日本ハムのトップは、少なくとも20002年2月には、社内調査で偽装工作の事実を掴んでいたにもかかわらず、それを隠蔽し、さらにはその物的証拠である牛肉を2002年7月中頃に焼却し、そのうえ農水省に対し虚偽の弁明をし続けていました。
この日本ハム事件が社会に公になったのは、2002年7月末に、近畿農政局に電子メールで「日本ハムはJAS(日本農林規格)法違反ではないか」との関係者の内部告発があったことが発端だと報道されています。
これまでの内部告発による企業の偽装事件
これに類した最近の主な事件を拾ってみると、2000年には三菱自動車で、社員が運輸省に内部告発をし、長年にわたるリコール隠しが発覚しました。
さらに2002年に入って、雪印乳業の子会社であった雪印食品で、取引業者の内部告発によって、日本ハムと同じような国産牛肉買い上げ事業を悪用した偽装事件が発覚しています。
ダスキン・ミスタードーナツの肉まんに無認可の食品添加物が混入していた事件の発覚も、関係者の内部部告発がきっかけだといわれています。
USJの一連の不祥事の先触れとなった品質保持期限切れ食品使用事件も、元アルバイトの内部告発によって発覚したものです。
これらの事件は、もし内部告発がなければ、隠蔽されたまま、是正措置もとられずに放置され、いっそう重大化、悪質化したかもしれません。
求められる内部告発者への保護
安全や環境に重大な脅威をもたらす恐れのある行為や悪質な違法・不正行為に対する内部告発は、公益をまもって社会正義を貫く勇気ある行動です。
そうした内部告発は、推奨されこそすれ、非難されるべきではありません。
しかし、残念ながら、現実には、「儲けのためには手段を選ばない」、「バレなければ、違法行為も辞さない」という企業が後を絶ちません。
総会屋利益供与や粉飾決算もこうした企業風土に根ざした企業犯罪です。他方、そうした企業風土のもとでは、内部告発は「悪」とみなされ、いったん社内の違法・不正が外部に漏れると、「犯人探し」がされ、勇気をもって告発した社員がしばしば解雇されたり、不当な処分を受けたりすることがあります。
ハンナンやミートホープのように食品の偽装表示等の違法行為が多発していることを受けて、国民生活審議会(内閣府)は、消費者保護基本法を改正し、内部告発者を守る「公益通報者保護制度」の導入を盛り込む方向で検討中だと伝えられています。
イギリスには、内部告発者を保護する「公益開示法」(1998年制定、99年施行)があり、法遵守義務違反、誤審、健康・安全への加害、環境破壊、不正の隠蔽等に関して、従業員が雇い主や監督機関に内部告発を行った場合、従業員を解雇や損害賠償から保護することを定めています。
アメリカには、州のレベルで類似の制度が導入されています。日本ではこれまでにあるのは原子炉等規制法で内部告発者を保護する規定くらいのものです。
